
純愛とはほど遠い恋愛をしてきた、青海ゆうきです。
Twitterでフォロワーさんがこの本のことを書いていて、タイトルの美しさに惹かれ購入した「葉桜の季節に君を想うということ」。
有名な本だが運良く予備知識はなく、勝手に純愛小説だと思って読み始めた。
ある意味その予想は当たっていたが、この作品は読んだあとに「騙された!」と思うような仕掛けが施されているミステリー小説だった。
そんなトリックが仕込まれている「葉桜の季節に君を想うということ」のレビューをしようと思う。
勿論、この本の一番の魅力であるトリックのネタバレはなしだ。
「葉桜の季節に君を想うということ」について
2003年3月に出版された推理小説で、第57回日本推理作家協会賞受賞、第4回本格ミステリ大賞受賞、このミステリーがすごい!など2004年のミステリーの賞を総なめにした人気作品で、現在でも評価され続けている名作だ。
作者について
この本の作者は1961年生まれ千葉県出身の推理小説作家、歌野晶午さん。
本格的なミステリーや巧妙なトリックを用いた作品が特徴的だ。
1995年以降はエンターテイメント性の高い作品も増えて、ミステリーファンに限らず誰もが楽しめる作品が多い。
内容
主人公・成瀬将虎は、ある日後輩の芹澤清から久高愛子の相談に乗ってほしいと頼まれる。
愛子は事故で死んでしまった身内が悪徳商法業者・蓬莱倶楽部によって保険金目当てで殺されたのではないかと疑いを抱いていた。
警察沙汰にしたくはないけれど真実を知りたい愛子は、その証拠を掴んでほしいと昔探偵事務所で働いていた成瀬に頼む。
同じ時期、成瀬は地下鉄に飛び込んで自殺をしようとした麻宮さくらという女性を助ける。
その出来事をきっかけに二人は頻繁に会うようになるのだが、愛子に頼まれた蓬莱倶楽部のことを調べていくうちに、麻宮さくらも関わっていることを知る。
レビュー
まず、この本のことをどこかで知って読もうと思っている人に一番言いたいことは、ネタバレの記事を読まないでほしいということだ。
ミステリーや推理小説は犯人やトリックがわかってしまうと面白さが半減する。
「葉桜の季節に君を想うということ」においては、犯人はだいたい最初からわかっているし(蓬莱倶楽部を追っている)、犯行のトリックもさほど重要ではない。
物語全体がトリックであり、伏線はあるものの簡単に見破れないようになっている。
最後まで騙され続けて読むほうが面白い小説なのだ。
全体的にコメディータッチで、次々と話が展開するのですいすい読める。
蓬莱倶楽部という悪徳商法の会社についても、実際こういう会社あるなーとおかしくなった。
僕の周りにも健康食品や健康器具の販売をする人間が居て、保険金目当ての殺人はしていない(と思う)ものの、同じような話をしていたことを思い出した。
無料のセミナーがあったり、説明会にさくらがいたり・・・。
何でも屋と自称するざっくばらんでちょっとかっこつけの成瀬の視点で物語が進むので、作品に対して重々しいという印象はさほどないが、もし主人公が根暗で陰気なキャラだったとしたらこの話は相当暗い話になっていたと思う。
話の根底には現代社会の闇や人間の愚かさ、弱さ、儚さがあり、すいすい読めるが考えさせられる部分も多い小説だなと思った。
読み終わるまで、いや、読み終わっても良い意味でこれが本格ミステリーだとは思えないほど読みやすく、普段ミステリーは読まない人にもおすすめできる。
mubook的評価
悲しい ★★★☆☆ 切ない ★★★☆☆ 苦しい ★★☆☆☆ 暗い ★★☆☆☆ 重い ★★☆☆☆
合計 12/25★
病んでる度30%
まとめ
ミステリーの賞を数多く獲得した本というだけあって、ネット上でもレビューや評価の記事がたくさん書かれている。
トリックがわかったあと2回目、3回目と読み返す人も多いようだ。
タイトルの「葉桜の季節に君を想うということ」は最後まで読むと意味がわかる。
これ以上書いてしまうとネタバレに近づいてしまうので、あとは自分の目で確かめてほしい。