「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をレビュー。人間とアンドロイドの明確な違いはどこにあるのか

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食わず嫌いでSFを敬遠していました、どうも青海ゆうきです。

 

本の装丁を見た瞬間に購入を決めた「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」。

いわゆる、ジャケ買い。

本やCDのジャケットは大事。

内容がわからないものをいかにして手に取らせるかはデザインの大きな役割だ。

とくに「インスタ映え」を意識することでSNSの拡散力にあやかって販売数を大きく伸ばすことができるのが今日の日本。

 

そんなジャケ買いをしてしまった「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は僕があまり読まないジャンルのSF小説だが読んでよかったと思える一冊になったのでレビューすることにする。

SFってちょっと苦手・・・と思っている人にも是非この記事を読んで、SF小説デビューをしてもらいたい。

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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」について

 

フィリップ・K・ディックのSF小説で、日本では1977年にハヤカワSF文庫から出版された。

映画ブレードランナーを観たことはあるだろうか?

実はあの映画の原作がこの「アンドロイドは電気羊は夢を見るか」だ。

 

人間は火星に移り住み、地球はわずかな人間しか暮らしていないという未来の話。

人間と区別のつかないほど精巧につくられた脱走新型アンドロイドを処理し、懸賞金をもらって主人公のリックはあるものを買おうとしている。

 

 

作者について

 

フィリップ・K・ディックはアメリカ・シカゴ出身のSF作家。

数々の長編、短編小説を残したSF界の巨匠だが、書籍のほうは日本人にあまり馴染みがないかもしれない。

しかし彼の本を原作とした映画は有名なものが多く、「トータルリコール」「マイノリティーリポート」そして「ブレードランナー」は知っている人も多いことと思う。

彼の作品はSFでありながらSFに留まらない哲学的なものが多く、SFの苦手な人でも楽しめる本が多い。

 

 

内容

 

第三次世界大戦のあと、地球は「死の灰」と呼ばれる放射能灰によって汚染され、動物は絶滅に瀕し貴重な存在となった。

動物を所有することがステータスとされた地球で、主人公のリックは人口の電気羊しか持っておらず、本物の動物を買うために莫大な懸賞金がかけられた逃亡アンドロイドの処理を始める。

しかしアンドロイドと接する度に、自分(人間)とアンドロイドはどう違うのか、アンドロイドにも自分と同じような感情があるのではないか、だとしたら処理することは殺人と同じことなのではないかというように自問自答し処理に抵抗を感じ始める。

 

 

レビュー

 

いつかこんな未来が来るのかもしれない、と思わせるようなリアリティのある世界観がベースにありつつも、現在とはかけ離れた設定のアンドロイドや人間の姿がある。

動物は絶滅に瀕していて、馬、羊、猫などは店で買うことしかできずしかもかなりの高値だ。

人間が起こした戦争のせいで、地球には「死の灰」という放射性の灰が降るようになり多くの動物は死滅してしまったのだ。

人類は地球から火星への移住を始めていた。

 

人間もその灰の影響を受け、生殖を許された「適合者」と生殖も火星への移住へも許されない「特殊者(スペシャル)」と分類されている。

特殊者(スペシャル)は堂々と生活することができず、人の少ない廃墟のような場所でひっそりと暮らしている。

この差別的扱いは、今、僕たちの身近にも存在していると感じた。

 

リックは本物の動物を飼うために懸賞金目当てでバウンティー・ハンターになるのだが、アンドロイドと接していくうちに人間とアンドロイドは何が違うのかという疑問を抱くようになる。

現在の僕たちの世界のアンドロイドは見た目からも人間と区別がつくが、見た目も人間と区別がつかず、それぞれ性格があり、繁殖はできないものの性交もできる、そんなアンドロイドが普及していけば必ず人間とは何かという普遍的な、また哲学的な問いに直面する

本書では他者に共感できない、冷酷な一面を持つのがアンドロイドの特徴だとしているが、人間でもそういう人はいる、と僕は思った。

 

本物の人間とアンドロイドで決定的に違うのは、繁殖行動によって次の命が生まれるかどうか、この一点しかないと思う。

人間の定義が倫理性や道徳性にのみあるとしたら、AI(人工知能)がさらに発達すればアンドロイドも人間として扱われる日も来るのではないだろうか。

 

僕が一番心が病んでいた時、まだ何もわかっていないと言ってもいい宇宙の中に生きているという気持ち悪さ、自分とは何なのか、何のために存在しているのか、ということをよく考えていた。

実際僕たちは、わかっているものの方が少なく、自分たちで勝手に定義したものの中で暮らしている。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のような未来が訪れた時、リックが抱いた問いはリックだけでなく人類が直面する問題となる。

 

 

mubook的評価

悲しい ★★★★☆
切ない ★★☆☆☆
苦しい ★★☆☆☆
暗い  ★★★★☆
重い  ★★★☆☆

合計 15/25★

病んでる度50%

 

 

映像で楽しみたい人には

 

冒頭でも紹介したが、この作品を原作とした映画がハリソンフォード主演の「ブレードランナー」だ。

映画では登場人物やストーリーが大きく変わっていて、原作というよりは原案に近い。

原作に忠実な映画じゃないと嫌だ!派の人にはおすすめできないけれど、本は本、映画は映画として観ることができる人にはおすすめの映画だ。

 

 

続編の「ブレードランナー 2049」は2017年に公開されて、2018年にDVDになったばかりだ。

 

 

それから、ブレードランナーの続編で実は3冊本が出版されている。

映画「ブレードランナー」

ブレードランナー2―レプリカントの墓標

ブレードランナー〈3〉レプリカントの夜

ブレードランナー4 Eye and Talon(翻訳版はまだない)

という流れで、ブレードランナー2049とは関係なく、アンドロイドは電気羊の夢を見るか?の続編でもない。

マニアックなラインだから本の価格もお高め。

 

 

まとめ

 

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」というタイトルはこの本を読んだ人に対する問いでもある。

SF小説を読んだことのない人哲学が好きな人、へとくにおすすめする一冊だ。

未来の地球がもしこうなってしまったら、という仮定のもと主人公リックと共に人間のアイデンティティや人間を定義するものは一体何なのかということを考えながら読んでみてほしい。

 

余談だがこの本の装丁(カバー)がとても素敵で、読み終わったあと立てかけておくのもオシャレだなと思った。

ハヤカワSF文庫から出ているフィリップ・K・ディックの小説はこのデザインが使われているのでコレクター癖のある僕としては全部集めたいところだ。

集めて読んだ本でおすすめしたい作品があったらまた記事にしようと思う。

 

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