
いつの間にか平成が終わっていました、どうも青海ゆうきです。
みなさんの平成最後に聴いた音楽は何だっただろうか。
僕はこの記事を数日前から書いているので今回書くLIPHLICHの曲をずっと部屋で流していた。
LIPHLICHを知ったのは半年ほど前。
youtubeで最近のバンドの曲を色々と聴いていた時に出会ったバンドで、最初に聴いた曲が好みだったのですぐに他の曲も聴いてみた。
独特の世界観で今までにあまりないビジュアル系バンドだなというのが第一印象で、ここまで自分たちの世界観を持っているバンドはMALICE MIZERくらいしか思い当たらない。
今回はそんなLIPHLICHのおすすめ曲とおすすめアルバムをレビュー&紹介する。
LIPHLICHとは
2010年に久我新悟と進藤渉を中心に結成。
メンバーチェンジを経て、ボーカル・久我新悟、ギター・新井崇之、ベース・進藤渉、ドラム・小林孝聡の四人になったが、2018年の秋にベース・進藤渉が脱退を発表し話題となった。
バンド名はロックミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」に登場する「Riff Raff(リフラフ)」からとったもの。
「4人の奇才家が演出を手掛ける、シーン随一のエンターテイメントロックバンド」というバンドプロフィールの元に活動している。
東から昇る….の….と
溶け合い見えなくなる
しかし、
消えはせず確実に其処に在る
「44444444」 pic.twitter.com/wSHr9FKB5e
— LIPHLICH(リフリッチ) (@LIPHLICH) 2018年1月21日
LIPHLICHのおすすめ曲10選
バンドの説明をするよりも曲のレビューをしたほうがLIPHLICHのことをわかっていただけるだろう。
ということで早速、LIPHLICHのおすすめ曲を10曲紹介する。
シャルルの憂鬱
黒夢の「少年」を彷彿させる印象的なギターリフ。
ややアップテンポだがノスタルジックな雰囲気とロックが合わさったバラード。
曲で呼びかけるように繰り返される「シャルル」というのはフランス語圏の男性名。
このシャルルという男性は特定の人物のことなのか色々推測したが一番しっくりくるのが、フランス革命期の死刑執行人「シャルル=アンリ・サンソン」だ。
彼は死刑執行人という立場にありながら死刑廃止論者であり、何度も死刑廃止の嘆願書を出している。
「君が与えたその死」「君が嫌ったその死」
というフレーズは自分が執行した死刑のことではないだろうか。
それをふまえてこの曲を聴くとシャルルの苦悩の日々や心の痛みが感じられる。
そのシャルルに対しての敬意と励ましの歌が「シャルルの憂鬱」ではないだろうか。
ウロボロス
蛇(ウロボロス)をモチーフにしたノリの良い一曲。
とくにサビの言葉遊びが楽しい。
歌詞カードなしでは何と言っているのかわからない部分が多い。
意味よりも語感や語呂合わせを楽しんでいる曲。
ウロボロスは、自分の尾を噛んで環となった蛇や竜を図案化したもので古代の象徴の一つ。
蛇は死と再生の象徴。その蛇が自らの尾を食べることで始まりも終わりもない完全のものとして意味が備わった。
この曲が収録されているアルバムのタイトルは「蛇であれ 尾を喰らえ」。
ウロボロスはこのアルバムのメインにあたる曲であると言える。
飽聴のデリカテッセン
アルバム「フルコースは逆さから」に収録されている曲で、イントゥルメンタルの「街へ出よう」からの流れをくんでいる。
デリカテッセンとは飲食店のこと。
食器や包丁の音がアクセントに使われていたりと音でもその雰囲気を出しているところが楽しい。
もしかしたら包丁と、飽聴(飽調)をかけているのかもしれない。
とても皮肉のこめられた歌で、ある意味挑戦的な歌詞だ。
現代の音楽とそれを好む人間にに対する揶揄で、それを飲食店に例えて歌っている。
Bメロの
「求めるヤミー(美味しい)分からないのにパッとミミクリー(真似)何がお好み」
というのは自分の確固たる音楽の好みや良さはわからないから、真似事で作られたものをつい良いと思ってしまうのでしょう。
というような意味があると僕は思って聴いている。
比喩というよりは暗喩に近い歌詞ではあるがかなり挑戦的でかつLIPHLICHの自分たちの音楽に対する信念さえも感じられる。
Bメロや間奏の旋律が何かの曲に似ていると感じるのはわざとそうしているのだろう(何が元になっているのか思い出せないのでわかった人がいたら是非教えてほしい)
大計画
スローでダークかつ荘厳なゴシックさも兼ね備えた曲。
鐘の音が雰囲気を出している。
Bメロでピアノとストリングスで引いてサビではどーんと重厚感のあるサウンドに落とすという流れがとても心地よい。
マッドサイエンティストのある計画が歌詞になっている。
このマッドサイエンティストの執着心を表しているかのようなねっとりした歌い方も聴いているとくせになる。
マズロウマンション
アメリカの心理学者アブラハム・マズローの自己実現理論(欲求5段階説)をモチーフにした不思議な曲。
上の階層から
承認(尊重)の欲求
所属と愛の欲求
安全の欲求
生理的欲求
というものでこれをマンションの階層に見たて、そこに住む住人やマンションのルールなどが歌詞となっている。
ストーリー性のある歌詞と奇怪なメロディーでホラーコメディの映画を観ているような気分になるのは僕だけではないはずだ。
主人の楽園
鳥のさえずり、ハープの音、のどかな楽園を思わせるイントロから静かに曲は始まる。
ギターソロはどこか悲しそうな音色をしている。
「綺麗なものも汚いものも どちらだってもう見たくはない」
という諦念から
「必要とし必要とされる そんな日がいつか来るだろうか」
と希望を抱き
「そうだろう?」
と投げかける様子がとても切なく孤独を感じる。
1番の後の間奏からバスドラムや鈴の音色、更に2番ではストリングスの音色も加わりオーケストラのような壮大さでクライマックスを迎える。
My Name Was
ゴシックさが溢れ出すアップテンポでノリの良い曲。
この曲の間奏をどこかで聴いたことがある・・・と思ったら、トルネコの大冒険のダンジョンの曲にそっくりであることを思い出した。
航海の詩
この曲を最初に聴いた時、タイトルや歌詞など何も知らない状態であったが、ディズニー映画に登場しそうな海賊の合唱と、水の音、そして船が大きく揺れるようなテンポと荒れる波や雷鳴を模した重低音とシンバルの音で、これは海賊の航海の歌かな?と思ったのを覚えている。
それだけ曲に情景を映し出す力があり、LIPHLICHの曲はこうした曲を映像としてイメージさせる力がとても強いと改めて感じた。
LIPHLICHの音楽に対する決意表明のような曲ではないだろうか。
猫目の伯爵ウェンディに恋をする
カルメンのハバネラのメロディーにのせたイントロから始まる人気の曲。
LIPHLICHのファンのことをウェンディと呼ぶのはこの曲からきている。
猫目の伯爵がウェンディを連れて見世物小屋へ行く。
見てごらんウェンディ 顔だけセレブが玉から落ちた
ほらその上では絵描きが綱から足踏み外した
これは痛そうだ ひきこもりが投げたナイフが教師に刺さった
手慣れたもんだね 「危険がお好きなIT社長が火の輪をくぐる」さ
と人間界で起きることをどこか侮蔑しながら冷笑している。
またこの曲もストーリー性があり一つの物語の一節を読んでいるかのような展開となっている。
BABEL
テクノやダンスミュージックに使われるエレクトロニカルな音の入ったイントロ。
タイトルの通り、この曲のモチーフは「バベルの塔」。
人間が思い上がって天まで届く塔を建設しようとし、神の怒りにふれて落雷によって壊されてしまう、というのがバベルの塔。
テンポと語感が良く、題材に加えて「りんご」というワードを出すことで神話的要素が強くなっていると感じた。
LIPHLICHのおすすめアルバム
今回レビューした「飽聴のデリカテッセン」「大計画」「マズロウマンション」「主人の楽園」の4曲が収録されているアルバム「フルコースは逆さから」は一番おすすめするアルバムだ。
紹介はしなかったが「ミズルミナス」と「月を食べたらおやすみよ」も僕の好きな曲で、二つの曲は同じ二人の男女の曲だと思われる。
そういう繋がりを意識して聴くとより楽しめるだろう。
LIPHLICH初期の世界観を味わいたい方には「STUMP+」が良いだろう。
こちらには「My Name Was」「航海の詩」「猫目の伯爵ウェンディに恋をする」「BABEL」が収録されている。
もしLIPHLICHに興味がある方で「シャルルの憂鬱」を聴いたことがない人は「蛇であれ 尾を喰らえ」を聴いてみてもらいたい。