
みなさんお久しぶり。青海ゆうきです。
ここ最近、またラルクの曲をよく聴くようになった。
ラルクは小学生の時から大好きで、今も活動している貴重なバンド。
国民的アーティストで知らない人はいないと言っても過言ではないが、残念なことに最近の若い人にはあまり認知されていない様子。
そこで今回はラルクの名曲を紹介しようと思う。
ラルクの曲にはアップテンポで明るいもの、バラード、ダークなロックなど様々なテイストの曲が存在するが、今回は切ない名曲を紹介することにする。
L’Arc~en~Cielについて
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1991年に結成した4人組バンド。
バンド名の「L’Arc〜en〜Ciel」はフランス後で「虹」という意味だ。
メンバー交代を経て現在は、ボーカルのhyde、ギターのken、ベースのtetsuya、ドラムのyukihiroの4人に落ち着いた。
1stアルバム「DUNE」はオリコンインディーズアルバム週間チャートで一位を獲得。これを機にインディーズ界では不動の人気を誇ることとなる。
1994年の「眠りをよせて」を発売しメジャーデビューしたが、当時メジャーデビューしたとライブなどで大々的に発表することはなく、
ライブや広告でメジャーデビューを発表するトレンドが嫌だった
「BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES 『tetsuya/L’Arc〜en〜Ciel』」、p.16、リットーミュージック、2010年 より
とtetsuyaは語っている。
1996年から1997年にかけてはアリーナ公演を含むコンサートツアーを開催し人気も出始めていたのだが、当時のドラマーsakuraが覚せい剤取締法違反で逮捕され、その後のスケジュールが白紙となり、バンドも活動休止を余儀なくされた。
その後サポートドラマーとしてyukihiroが加わりリリースしたのが代表曲「虹」だ。
yukihiroが正式に加入してからは「winter fall」、「HONEY」、「花葬」、「浸食 〜lose control〜」、など初期~中期のラルクを代表する名曲が次々生まれ、日本を代表するアーティストとなった。
L’Arc〜en〜Cielの苦しくなるほど切ない名曲
L’Arc〜en〜Cielは2021年に30周年を迎えた日本の大御所バンド。
近年は新曲リリースの間隔があいてきてファンは次のリリースに期待を寄せるばかりだが、
初期~中期(解散していないバンドなのでこれは僕の間隔だが)は次々と新曲リリース、そしてチャートインと目まぐるしいかつ勢いのあるバンドだったことは言うまでもない。
これまでになんと全436曲!
30年で436曲ということは1年に14曲、1か月に1曲以上制作しているということになる。
それに加え個々のソロ楽曲や、hydeがボーカルを務めるバンド「VAMPS」の曲もあるので、つまりは、この人たちいつ寝てるのと言わざるを得ない。
そしてすごいのは、これだけの曲数があって素晴らしい曲が本当にたくさんあるということ。曲のジャンルや雰囲気も様々でこの人たちに作れない曲はないんじゃないかと思うほどである。
今回は苦しくなるほど切ない名曲という枠で曲を厳選した(本当はもっと紹介したいのだが次回以降にする)。
あなた
この曲の記事を書くにあたって「あなた」を聴きながら歌詞の意味を確認したり、曲の構成や使用楽器をメモしていた僕は、何度聴いたかわからないのにも関わらず涙を流しそうになってしまった。
この曲を聴いたことない人がさっと聴くと愛のバラードのように聴こえるかもしれない。
「あなた」の歌詞の意味を知るには出だしのAメロの意味を考えていただきたい。
眠れなくて窓の月を見上げた・・・
思えばあの日から
空へ続く階段をひとつずつ歩いてきたんだね
あなた/L’Arc〜en〜Ciel より
眠れずに空を見上げる主人公が思いをはせている「あなた」に向けて『空へ続く階段をひとつずつ歩いてきたんだね』と語りかけている。
想像したらなんとなくわかるとは思うが、空へ続く階段というのは天国のこと。
天国に行くための階段を一つずつ歩くように生きてきたんだねということだ。
つまりこの曲は、もうこの世にはいない「あなた」を想う曲だ。
この世にはもういなくて、形のないあなただけど、胸にいつもあなたがいるから強く生きていけるんだよ、という歌詞はボーカルhydeが祖母を想って作った曲。
hydeにとって「あなた」はとても素敵で大切な人であることがよくわかる。
それを想像しただけでもう涙腺崩壊なのは歳のせいだろうか・・・。
この曲の「あなた」はhydeにとっては祖母であるが、人それぞれの「あなた」を思い浮かべて聴いてもらいたい。
ちなみに作曲したtetsuyaにとっての「あなた」は新世紀エヴァンゲリオン劇場版のアスカだそうだ。
「この曲は『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロインの一人である惣流・アスカ・ラングレーを想って書いた」
「曲の原型は”あなた”は俺にとってはアスカなんです」
「アスカに向けて”心を開いてくれ”という思いで作った」
BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES/tetsuya L’Arc〜en〜Ciel /リットーミュージック p.61より
とインタビューで語っている。
Pieces
「あなた」を超える名曲を生み出したいと作られたのが「Pieces」。
ラルクの歌詞作りが上手いなあと思うのは、聴き手によってとらえ方が変わるように、かつイメージを共有できるところだ。
「あなた」も「Pieces」はある意味対になっている曲と言える。
大好きなその笑顔くもらせてごめんね
祈っても時の流れ速すぎて遠くまで
流されたから戻れなくて
Pieces/作詞:hyde 作曲:tetsuya より
Aメロのこの部分、大好きな笑顔の持ち主を悲しませてしまい、(戻りたいけど時は無常で)祈ってももう傍にいることができない、つまり、この歌の主人公は死んでしまった人なのだ。
途中何度も出てくる「私のかけらよ」というのはタイトルにもなっているPieces。
私の一部、捉え方によっては親子であるし、私を構成していた物の一部と捉えれば、それだけ大切な存在だと言える。
「あなた」は生きている人が死者を思い強く生きていく曲、「Pieces」は死者が残された人を励ます曲なのだ。
どちらも穏やかな(長調であることがそう感じさせる)曲調のバラードだが、どちらも夏の太陽のような眩しさではなく、寒くなりかけてきた秋の月を思わせるような物悲しさと切なさを持っている。
バンドミュージックにストリングスを加えた壮大な世界観と心が締め付けられるようなギターソロ、hydeの美しい歌声が合わさってこの二曲はただの音楽ではなく、まるで映画の中に入ったような没入感を得られるのだ。
瞳の住人
ラルクの中でも人気の高いバラード「瞳の住人」。
先ほどの2曲同様、こちらも曲の主人公生きてる説と死んでる説がある。
サビ以外のパートでは不安そうで憂鬱そうな主人公が描かれ、サビでは一気に願いを歌い上げるという構成で、歌詞だけでなく曲もサビは力強く、またhydeのハイトーンボイスが力強くも美しく響く名曲中の名曲だ。
そのハイトーンボイスだが、曲中の最高音は「hihiA」。
と言ってもピンとこないだろうが、男性でこのキーまで出せるアーティストはなかなかいない。女性でもとくに高音が得意なアーティストでないと綺麗に出すことは不可能だ。
(初音ミクなどのボカロならば・・・)
そして歌詞のほうはというと2番以降サビの
そばにいて ずっと君の笑顔を見つめていたい
移り行くその瞬間をその瞳に住んでいたい
瞳の住人/作詞:hyde 作曲:tetsu
にこの曲のすべてが詰まっているのではないだろうか。
瞳に住んでいたい、と願っていることからもしかして主人公は目に映らない存在なのでは?という解釈もできるし、実際になかなか会えない遠距離恋愛なのでは?と解釈することもできる。
瞳に映っていたい、ではなく、瞳に住んでいたい(そこからタイトルの瞳の住人)と表現することがhydeの作詞らしくラルクの曲の中でも美しい表現だなと思う。
forbidden lover
マイナーコードが好きな皆さんお待たせいたしました。
ラルクの曲の中でもベスト3に入る僕の大好きな曲「forbidden lover」。
ここまで紹介した3曲よりもさらに抽象的な歌詞なので少々解説的になってしまうがご勘弁を。
「forbidden lover」は直訳すると「禁じられた恋人」。
禁じられた恋人というワードだけではどんな関係性の恋人かはまだわからないのでここから歌詞について紹介する。
あぁ凍える暗い海へ
流されてゆく歴史の波にのまれ
forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
出だしから不穏な空気が流れている。
凍える暗い海へ流されていく、というところから冬の夜の海という情景がまずわかる。
やがて幕は上がり
儚い夢を連れて争いに火をつけるいつの日に見失った心は 繰り返す忘れ去られた罪を
あやまちを育てその汚れた愛で 瓦礫に築く楽園
forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
どうやら争いが起きているようだ。
歴史、繰り返される罪、瓦礫というワードから戦争が起きているということが連想される。
forbidden lover… 淡い記憶
強く抱いても重なり合えぬ色彩
息をひそめ誓う
甘い恋の果ては予期せぬ時の悪戯
forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
このあたりからさらに抽象的になるが甘い恋の果ては予期せぬ時の悪戯、の時の悪戯とは戦争が起こって二人が引き離されているということではないだろうか。
主人公は戦争が起こる少し前に恋人のいる(恐らく敵国)に行こうと海へ出た、というのが歌詞前半の物語となる。
何故敵国かというと、タイトルであったように禁じられた恋人というタイトルがあるからだ。
燃え上がる炎に取り囲まれ 崩れゆく船に命つかまれ
怯えた瞳は天を仰いで 叫ぶ神の名を
forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
ここで物語は急展開を迎える。主人公を乗せた船は攻撃を受けたのか、火事になってしまい船は崩れていく。
そしてその残骸に捕まり恋人のことを思いながら神の名前を呼ぶ。
タイタニックの最後のシーンのようだ。
主人公はどんな気持ちで神の名前を呼んだのだろうか。
助けてほしい、恋人に会わせてくれと願ったのか、それとも引き裂かれる二人の運命に神を呪ったのだろうか。
空高く舞い上がれこの心 渦巻いた悪い夢より高く
解き放つ貴方へのこの想い 遠い地へ輝きを放って
新たなる国に やがて来る日にも
同じ道をまた通るだろう
forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
最後に主人公はこの想いが恋人に届くように祈る。
また同じような状況になって引き離されたとしても同じ道を辿るだろう、と恋人への強い想いを抱きながら。
「forbidden lover」は一つの物語を歌っている点では珍しい曲と言える。まるで映画のワンシーンを抜き取っているかのようなドラマチックな展開は次はどんな歌詞が来るのだろうかとドキドキさせられる。
そして「瓦礫に築く楽園」「強く抱いても重なり合えぬ色彩」など「forbidden lover」はhydeらしい美しいワードが所々に散りばめられている。
体言止めのワードがさらに曲の美しさと儚さを深めている。
さらに、叙情的かつ切迫感のある曲に仕上げている要因は音にもある。
イントロから終わりまでこの曲はスネアドラムのマーチングビートが鳴り続けている。
マーチングビートというのは行進曲に使われるようなリズムのこと。
「forbidden lover」のドラムはスネアドラムのマーチングビートがメインで、タムやシンバルはアクセントでしか使用されていない。
クラシックで言えば「ボレロ」のスネアドラムが一定に最後まで鳴り続けているのと同じだ。
時は待ってはくれない、差し迫る戦火、緊迫した状況、こうした状況をこのスネアドラムのビートが鳴り続けることでうまく表現しているように思う。
曲間ではギターソロの後ろでティンパニーが鳴り、曲を一層盛り上げる。
美しい歌詞と物語、オーケストラのような壮大な音楽。
「forbidden lover」はラルク好きには勿論、ラルクを知らない人、普段J-POPやロックを聴かない人にも是非聴いてもらいたい一曲だ。
finale
最後に紹介するのは「finale」。
東宝配給映画「リング0 バースデイ」主題歌になってるこの曲は、もし貞子が恋人だったら・・・という視点で作詞したらしい。
僕は「リング0 バースデイ」を観ていないので、単純に歌詞と曲の雰囲気のみでの感想になるが、どこか影のある女性とその女性の運命を悲観しながらも傍で見守り続けるという主人公の悲しみと切なさにあふれた曲だ。
女性を勇気づけるわけでもなく、ただ悲観し続けるわけでもなく、決められた運命のようなものを一緒に辿るように傍にいる主人公を思うと、それだけで胸が苦しくなる。
この記事の、苦しくなるほど切ない名曲というタイトルに最も相応しい曲でフィナーレを迎えることとする。
まとめ
ラルクの曲は本当に様々なテイスト、様々なサウンドで作られているため、1~2曲聴いただけではラルクの良さは全くわからないと言っても過言ではない。
ラルクの曲を聴いたことはあるけどいまいちだった、とか、ピンとこなかったという人は自分の好きなテイストのラルクの曲を是非探していただきたい。
今回紹介した曲が入っているベストアルバムはこちら↓