
一番行ってみたい国はフランス、どうも青海ゆうきです。
格付けチェックでお馴染みのGACKTがボーカルを務めていたビジュアル系バンドMALICE MIZERを皆さんはご存知だろうか。
MALICE MIZERは僕が初めて聴いたビジュアル系バンドで、ビジュアル系にハマるようになったきっかけのバンドだ。
現在は活動休止中で(MANA様とKOZIが行っているDeep Sanctuaryというライブではマリスの曲が演奏されている)誰かから勧められたり自分で調べないかぎりは曲を聴く機会はほとんどないかもしれない。
今回はかつてビジュアル系四天王と呼ばれていたMALICE MIZERのおすすめ曲を紹介したいと思う。
MALICE MIZERについて
1992年に結成されたビジュアル系バンド。
ボーカルの入れ替わりがあり、TETSUの頃を1期、GACKTの頃を2期、Klahaの頃を3期としている。
クラシック音楽がベースにある曲が多く、衣装やステージも含め中性ヨーロッパを彷彿とさせる。
バンド名もフランス語からきており、意味は「悪意と悲劇」。
曲名にもフランス語が多く使われている。
ビジュアル系バンドと言えば、ロック、メタルと基調としているのがほとんどだが、MALICE MIZERは曲によってサウンドが様々で、ギターがほとんどなくシンセサイザーとドラム、ベースで構成されている曲も多い。
ギターもギターとして使うというよりは、シンセサイザーの代用ととして使用していることもあり、それはマリスの世界観を作るためにはロックはこうあるべきだという固定観念を捨てた結果だと言える。
パイプオルガン・チェンバロ・ストリングスといった音色が使用されることが多く、ゴシックメタルやシンフォニックメタルに近い要素もあるが、とくに3期においては荘厳さが増し宗教音楽のような色合いが強い。
2期のGACKTがボーカルの頃は全盛期でメディアへの出演も多かった。
しかし1998年の12月、GACKTが突然の失踪。
翌年の1月に脱退を表明、同年の6月にはドラムのKamiが病気により急死。
残された3人でしばらく活動の後、サポートメンバーであったKlahaが3代目ボーカリストとして参加することとなった。
2001年の12月に、それぞれの自由な活動展開をするためMALICE MIZERは活動休止となった。
Mana様はMoi dix Mois(モワディスモワ)、KOZIはZIZというバンドで活動中。
Klahaはソロ活動をしていたが現在は消息不明。
yu^kiは目立った音楽活動はしていないのか現在何をしているのかは不明(しかし前述したDeep sanctuaryにはベースで参加している)
おすすめ10曲の紹介
今回はGACKTがボーカルを務めていたMALICE MIZER 2期の曲の中から僕の好きな10曲を紹介する。
麗しき仮面の招待状
ボーカルがGACKTになってから初めてリリースされた曲で、舞踏会をイメージして作られたクラシカルでゴシックな一曲。
ライブで踊ることを想定し打ち込みで作られている。
そのためギターの音はなく、シンセサイザーでのストリングス、オルガンの音色、女性コーラス、効果音が全面に出ている。
きしんだドアが開かれ怪しい雰囲気の洋館で行われている仮面舞踏会。
そこに迷いこんでしまったかのような曲の世界観に圧倒される。
サビは女性コーラスとのかけあいが、舞踏会で女性が舞う、そして男性が舞う、というようなスポットライトのあてかたを象徴しているようで、歌劇のような演出観がある。
所々でガラスが割れる効果音が響くのだが、それがいいスパイスになっていてストリングスや鍵盤の音で平坦になりがちなサウンドにメリハリをつけているのと同時に、不穏な空気をより醸し出している。
マリス2期は割とポップでキャッチーな曲が多く、3期になると荘厳さが増し宗教音楽や教会音楽に近いものが増えてくるのだが、2期と3期の良いとこどりをし、マリスの基本的な要素が入ったのがこの、麗しき仮面の招待状ではないだろうか。
追憶の欠片
悲壮感漂うピアノソロのイントロから始まり、ギター、ベース、ドラムとバンドらしいサウンドで始まるが、ギターの動きは普通のバンドとは明らかに違う。
マリスの曲に多く見られるのだが、二本のギターが主旋律を交互に弾く。かと思ったら、全く違う旋律の音を二本で奏でる。
これはギターにおいてはあまり他では見られないが、ピアノに置き換えるとクラシックでよくあるパターンだと僕は思った。
ピアノの左手と右手の動きを、左手担当のギター、右手担当のギターというように振り分けている。
モーツァルトやベートーベンのソナタでしばしば見受けられる、右手の主旋律の続きを左手が受け継ぐというのをギターでやっている、と感じるのだ。
そして和音ではなく、違う旋律を同時に弾くというのはバッハの曲のようだ。
こういった音の作り方がマリスの曲をよりクラシカルに響かせているのではないだろうか。
追憶の破片はアルバム「Voyaga~sans retour~」に収録されており、このアルバムはヴァンバイアがモチーフになっている曲が多い。
追憶の破片も僕=ヴァンパイアと考えると歌詞の意味が理解しやすいかもしれない。
Aメロがかなりの変拍子でBメロ・サビは4拍子、そのあとは3拍子と、目まぐるしい拍子の変化が面白い。
死の舞踏
アルバム「Voyaga~sans retur~」の曲の中で唯一GACKTが加入する前からある曲。
Mana様いわく、悲劇のヒロインのシンデレラ妄想をテーマにした曲。
その言葉通り、歌詞はシンデレラの舞踏会での一夜の恋といった内容だ。
ただし、このシンデレラはすでに死んでいるか、吸血鬼である可能性が高い。
長い廊下の一番奥の救われぬ夢はどこまでもずっと覚めない
「死の舞踏」/MALICE MIZER より
という歌詞が何度か登場するのだが、この部分は地下深くに安置されている棺桶のイメージがする。
この歌詞の部分だけ曲調も違い、シンデレラの妄想の部分とは別の第三者視点で描かれているためだ。
追憶の欠片と同じく、ギターのかけあいが間奏で入り、それ以外の部分ではオルガンやチェンバロの音色も入ってゴシック感も強い。
麗しき仮面の招待状と同じく、ガラスが割れる音が入っており、鐘の音色は魔法が解ける0時のイメージにピッタリと合う。
Syunikiss~二度目の哀悼~
オーケストラアレンジの壮大な曲でとくにストリングスの音色がよく効いている。
その中にもアコーディオンのタンゴのようなリズムやドラムのタムのドコドコドコという音が曲にスピード感を与えていて、要するにかっこいい曲だ。
この曲は、(おそらく恋人)死んでしまった君を主人公の僕が生き返してほしいと願い、神はその願いを叶えてくれた、というところから始まる。
しかし生き返った君は魂が抜けているような状態で、とても以前のような君ではなく、僕は神様に「心を戻して」と願うがそれは叶えられず、見ていられなくなった僕は最後の願いとして「安らかに眠らせて」と願う。
他の曲に比べ、ストーリーがはっきりしている。
タイトルのSyunikissは「主に帰す」という言葉をもじった造語で、サブタイトルの二度目の哀悼とは、一度死んでしまった人間が生き返り、もう一度死ぬということを意味している。
ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~
オルゴールの静かなイントロからパッとバンドサウンドのイントロへ切り替わる。
オルゴールやシンセも使われているがマリスの曲の中ではギターがかなり多く使われている。
メジャーデビューシングルというのも頷けるキャッチーなメロディと(マリスの曲の中では)バンドらしいサウンドでノリの良さと歌詞の雄大さが見事にマッチしている。
曲自体は勿論良いのだが、初回版についているスペシャルビデオがとんでもない代物で、一体制作費にいくらかかっているんだと驚かされる。
というのは冗談で、ヴェル・エールに繋がる物語をマリスのメンバー5人が演じているイメージビデオになっている。
このビデオがとてつもなく良い。
ヴェル・エールのイメージビデオであることは確かだが、とくにヴェル・エールが収録されているアルバム「merveilles」の曲においては場面によって通ずる部分が多くある。
ILLUMINATI
これまでのクラシック・ゴシック要素も含みながら、エレクトロニックなサウンドを加えたアップテンポの曲。
タイトルの通り秘密結社「イルミナティ」をテーマにした復活の儀式の歌。(実際にイルミナティがこのような儀式をしていたかどうかはわからない)
歌詞のいたるところに聖書や伝説を連想させるワードが散りばめられている。
たとえばセミラミス(美貌と英知を兼ね備えた残虐非道な女王)、ホーリーグレイル(聖杯)、ボアズ(エルサレム神殿の柱)など。
しかし全く意味を知らないでこの曲を聴くと、PVのせいもあって官能的でエロティックな曲にしか聴こえない。
これはどちらが先かはわからないが、わざと両方のニュアンスを混ぜて作ったのだと僕は思う。
官能的でありマジカルな曲だ。
Ju te veux
ILLUMINATIと雰囲気が似ている曲。
麗しき仮面の招待状が踊ることを前提に打ち込みで作られた曲という話をしたが、こちらももしかすると踊ることを想定した曲なのかもしれない。
ライブでは全員楽器を弾いていない。
シンセが多い曲でも、ドラムとベースは弾いていることが多いのだが、この曲ではサビでは全員が踊っている。
そのフリも今まではクルクル回ったり、左右に揺れたりと社交ダンスや舞踏会のイメージを持ったフリが多かったがJu teveuxではまるでアイドルのような動きをする。
ライブありきでアルバムを作ったとするなら、この曲は完全に踊りのための曲だと僕は思う。
この「ILLUMIMATI」と「Ju te veux」の二曲はこれまで古典的だったマリスを一気に近代的、というよりは、近未来的なある意味サイコ的なイメージを持たせたと言っても過言ではない。
クラシックとロックの融合がX JAPANだとするなら、クラシック・ゴシックとエレクトロニクスの融合がマリスだと言えるかもしれない。
月下の夜想曲
マリスの曲で一番の売り上げを記録し、知名度も高いのがこの曲。
タンゴ調のアレンジでマリスの曲の中ではかなりポップでキャッチーな部類に入る。
森の中の小屋に迷い込んだ僕が恋人同士の二つの人形に出会うおとぎ話仕立ての歌詞だ。
月下の夜想曲は先ほど紹介したヴェル・エールの後の話という説もある。
Le ciel~空白の彼方へ~
フランス語で「空」という意味のタイトル。
個人的にはLe cielの歌詞はわかりにくく、PVを見ても何がどうなったかという具体的なストーリーがはっきりしないのだが、忘れかけていた感情を思い出させる君との別れというイメージを僕は持っている。
天使かはたまた墜天使か、優しい声に導かれ人間界に降りたGACKTが純粋無垢な人間と出会い、そして感情を思い出したところで時間が来てしまい人間界から姿が消えていく、というのが僕なりの解釈だ。
真相はわからないが、マリスが解散した原因がこの曲にあるという話もありファンの中ではどこか悲しいイメージが付きまとっている。(これまで作詞はGACKT、作曲は他のメンバーということが多かったがLe cielは作詞作曲共にGACKTで、メディアがGACKTを単独で注目するようになったことがメンバー内の確執を生んだという話)
シングルバージョンとアルバムバージョンではアレンジが異なり、アルバムのほうがドラムの音が多くビートも多く刻まれている。
ライブの最後にGACKTが漆黒の羽をまとい空から舞い降りてくる演出がずっと心に残っている。
au revoir
フランス語で「さようなら」という意味のタイトル。
これまでオルガンやチェンバロなどの使用でゴシックさが際だっていたマリスの曲だが、au revoirはバイオリンとピアノがメインでクラシカルな要素が強い。
切ないバラード的な歌詞と、物語を始めるAメロ、サビへと向かっていくBメロ、そしてサビという王道な構成でとても聴きやすく、ヨーロッパの香り漂うオシャレな一曲。
しかしドラムはかなり叩いているので、ふんわりとしつつも軽快さがあり聴いていて全くだれない。
この曲を聴いてkami(ドラム)ってすごい人だなと再認識させられた。
これだけドラムを叩いたら(しかもギターがない曲で)普通ならもっとうるさいはずなのに全く気にならない。
kamiのドラムは繊細でいい意味で軽い。
そんなことを考えながら、タイトルのau revoirという言葉を照らし合わせるとなんだかとてもやるせない気持ちになる。
ゴシックっぽい曲は苦手という人には一番おすすめする曲だ。
まとめ
MALICE MIZERの曲は中世ヨーロッパを感じさせるゴシックでクラシカルな曲が多く、唯一無二のバンドであることは間違いない。
ビジュアル系というくくりだけでは彼らのことを表すことはできず、マリスはマリスという一つのジャンルとして存在していると言っても良いだろう。
僕がマリスに出会う前はこういう音楽を自分が好きだったということは全く気づいておらず(というよりはこういう音楽の存在自体を知らなかった)、初めて聴いた時にはすぐに好きだ!と直感した。
新しいジャンルの曲を聴いてみたいと思う人、クラシックが好きな人、フランス・パリにあこがれがある人、GACKTの声が好きな人、色んな人にマリスの曲を聴いてみてもらいたいと思う。